新たな音楽の楽しみ方・・・

音楽を聴くという行為は、今まではなかなか面倒だったように思う。

レコード時代は、大きなレコードをとり出して、静かに針を落とす。家は建て付けが悪いので、ゆっくり歩かないと針が跳んでしまう。30分後には裏面を聴くために、レコードを裏返す。好きな曲から順番を変えながら聴くことは、なかなか難しく、マイベストなんてものは作れなかった。

カセットテープはレコードの欠点を補ってくれた、ヒーローだった。
好きな曲を持ち歩くこともできるし、小さい。曲の順番を変えたり、マイベストを作ることもできる。でも、音はお世辞にも良いとは言えない。何度も聴くと、延びたり、テープがリールに絡まったりした。便利なようで不便な代物だった。

CDはなかなか画期的だった。音が傷さえつかなければ半永久的に悪くならない。小さい、曲順変更も自由。周囲で飛び跳ねても音が飛ぶことはほとんどない。音もオーディオマニアに言わせると、レコードの方が断然いいのだそうだけど、よくわからない程度。でも、一枚聴くと、また入れ替える。当たり前のことだけど、結構、面倒くさかった。

MDは使い勝手はいい。音もかなりいいし、小さい。ダビングに若干、時間がかかるけど、ポータブルプレイヤーは小さくて、CDにはない便利さを持っていた。でも、なんだか相性が悪いのか、すぐ機械が不調になったりして、あまり使わなかった。
でも、いままでどんなメディアを使っても、結局のところ、聴きたいCDやレコードを選んで、プレイヤーに運ぶ必要があった。外で聴きたければ。携帯プレイヤーをもって、ダビングしたMDやカセットを選んで、という作業が必要だった。当たり前のことだけど、ちょっとしたことだとはいえ、結構、面倒でついつい、聴かなくなってしまったりしたものだ。

ところが、ここ1年。音楽をまたよく聴くようになった。パソコンで音楽を鳴らすようになったのだ。
いわゆる、MP3というものの便利さを知ってしまったのだ。
MP3自体はそんなに新しい技術って言うことでもなく、インターネットとともに広がってきた技術。音楽をCDの10分の1に圧縮してしまう。音質は確かに悪くなるのだろうが、MDくらいか。まあ、気になるレベルではない。
ここ数年、パソコンで聴くだけではなく、携帯できるプレイヤーが増えてきたのだ。

筆頭が、RioVoltだろう。CDプレイヤーで、通常のCD以外にMP3のデータも再生できるという機械で、1万円以下から、2万5000円ほど。このくらいならプレイヤーを買うのもそれほど苦じゃない。肝心のデータCDは、CDRの低価格化で、CDRドライブが1万円ほど。メディアに限れば100円以下(30円以下も)で手に入るのだ。さらに、10分の1に圧縮できるわけだから、10枚のCDを1枚のディスクに収めることができる。つまり、10時間かけっぱなしにできるのだ。この便利さはなかなかすごい。10枚のケースに100枚分のCDを入れておける。これは楽だ。でも、若干、CDを焼く面倒もあるのと、ポケットに入れるには大きいという難点もあった。
他のMP3プレイヤーも悪くないけど、小さいものはメモリーオーディオプレイヤーと呼ばれるもので、せいぜい、中に2〜5枚分程度しかCDを入れることができない。次に聴きたいものがあるなら、消して入れ直す。これじゃあ、ものぐさな私は使わなくなってしまう。

そこで、アップルが面白いプレイヤーを出してきた。iPodである。なんと、ハードディスクを内蔵した、タバコの箱よりも小さいサイズのプレイヤーで、10Gもの容量をほこる。その製品コンセプトを見て、思わず買ってしまった。6万円である。かなり冒険な買い物だったが、結果的には大当たりだった。
10Gというと、CD1枚が640MB、1Gは1024MBである。実際にはiPod は9.4GB程だがMP3 データであれば、CD200枚以上は入ることになる。2000曲以上を持ち歩くことだってできるのだ。
プレイヤーへの移動も簡単。CD1枚をパソコンに取り込むのに、ほんの5分〜10分、データの転送に1分である。もちろん、パソコンの電源はそのためだけに入れるわけではなく、他の作業をしながら。音楽も聴きながら取り込みが完了する。あとは、好きな曲を選んで聴くだけ。ものすごい楽である。
こうなってくると、持ち出したあとに聴く作業が楽しくなる。
どれを聴こうか、手に取って考える手間がないのだ。ただ、再生ボタンを押すだけ。さらに、曲名、アーティスト名などの情報も自動的にインターネットから取得しているので、ジャケットとにらめっこする必要もない。面倒であれば、シャッフルにすればいい。おそらく、10日ほどは同じ曲を何度も聴く必要がない。バッテリーも10時間も持つ上、パソコンとの接続ケーブルにつなげば、データの上書きと充電をやってくれる。こっちが面倒に感じていたことを全部やってくれるのだ。
おかげで最近は外出時にいつも音楽を聴いている。車の中でも町でも。
久々にきいたアルバムの良さを思いも寄らずに認識してみたり。楽しいのである。レコードとは比べ物にならない楽しさ。気楽さ。
もし、私と同じようにものぐさな人は、思いきってHDタイプのプレイヤーを買ってみるといい。損はしないと思いますよ。

ちなみに昨日、ニューバージョンの発表がありました。これまでは5万は最低でも必要だったのだが、最下位の機種で、3万5000円ほど。最上位機種は20GのHDを内蔵しています。実にCD400枚を収納可能。はっきり言って、損はしないと断言できますよ。Windows版も出ましたし、PDAとしても使える。とりあえず、店頭に足を運んでみてはいかがでしょうか。別に回し者ではないですが、この快適さは皆さんに味わって欲しい。あと、日本メーカーだと、東芝が出していますが、ちょっとでかい。